自然の理薬局では漢方医学の傷寒論・金匱要略の原典の病理を中心にご相談を承っております。病気をおこすには、そこに病気になる気持ちの原因があります。それには東洋思想にある五行色体表を参考に致しております。


五行色体表






食物の味と働き

私たちが生きていて常に食べている食物は、自然界の中で、それぞれの生命がそれぞれの生命を育んできたその体を私達に提供してくれております。日本の気候は素晴らしい春夏秋冬という四季に恵まれております。春は生命が芽を吹き、夏は葉を繁らせて、秋は実りの時であり、冬は収穫した物を貯蔵します。このようにそれぞれの四季の素晴らしさがあります。先人はこの様な四季の食べ物を五つの味に分けております。その五つの味には、目には見えませんが働きがあります。この働きのことを漢方医学では、気といっております。五つの味は、酸、苦、甘、辛、鹹であります。酸は、いわゆる酸っぱい味です。この酸っぱい味は、収れん作用があります。散らばっているものを収める働きがあります。苦は、苦い味です。この苦い味は、たるんでいるものを引き締める作用があります。いわゆる固める働きがあります。甘は、甘い味です。甘い味は、ゆるめる働きがあります。辛は、辛い味です。辛い味は、滞っているものを散らせる働きがあります。鹹はしょっぱい味です。しょっぱい味は、物の乾きを抑制する働きがあります。いわゆる潤おす作用です。この様に五つの味に、それぞれの働きがあります。この五つの食物の味は、五つの臓器に当てはまります。酸っぱい味は、肝の病に作用します。しかしこの酸っぱい味は、胃の機能の弱い人には良くありません。それは五行相剋説から、木剋土です。いわゆる木は土の養分を吸い上げてしまうからです。木は酸です。酸が土の胃を損なう結果となってしまうからです。この事から胃の弱い人は、酢のとり方に気をつけるべきです。また、肝臓の弱い人は、辛いものを控えるべきです。それは五行相剋説から金剋木で、金で木を切り倒す関係から、五行色体表の金の五味は辛い味です。木は肝臓ですから、辛いわさび、こしょう、とうがらしなどは、取らない方が賢明です。
春は芽の出たものを、夏には燦燦と照らしている太陽エネルギーを受け成長している葉を、秋は実りの秋と言うように実を、冬は万物が枯れてしまい根の部分しか残りませんので、その根を食しております。そういう事から、芽、葉、実、根の部分にその四季の気は集中していることになります。この事から春は芽の部分を、夏は葉の部分を、秋は実の部分を、冬は根の部分を食べて生命エネルギーを頂いていることになります。春はたけのこ、うど等を、夏はキャベツ、ほうれんそう等を、秋は柿、くり等を、冬はさつまいも、カブ等を食すことになります。こういうわけで気という目には見えない働きを頂いている事になります。それと同時に食物の五つの味が五つの臓器に働いている事になるわけです。その気が体を養っている以上は、食べ物を食べないのもいけないし、食べ過ぎてもよくありません。体の症状から、内臓の判断をして、バランスをとっていくべきです。   
肝臓が体質的に弱く疲れやすい人は、酸味の物と甘い味の物を食べて補い、辛い味の物を取り過ぎないようにしなければなりません。金剋木により金の辛が肝を剋するからです。五行色体表から木の五味は酸です。この理由から酸が肝を補うことになります。                   
心臓が体質的に弱く疲れやすい人は、苦味の物と辛い味の物を食べて補い、鹹の味の物を取り過ぎないようにしなければなりません。心臓が病として強すぎる時は、鹹の味の物を余分に取るようにしなければなりません。
脾胃が体質的に弱く疲れやすい人は、甘い味の物と鹹の味の物をなるべく食べた方がよろしいと思います。しかし、酸味の物を取りすぎてはいけません。脾胃が病として強すぎる時は、酸味の物を取ることにより脾胃の働きを抑える必要があります。
肺が体質的に弱く疲れやすい人は、辛い味の物と酸味の物を食べて補い、苦味の物を取り過ぎないようにしなければなりません。肺が病として強すぎる時には苦い味の物を取る事により肺の働きを抑える必要があります。
腎臓が体質的に弱く疲れやすい人は、鹹の味の物と苦い味の物を食べて補い、甘い物を取り過ぎないようにしなければなりません。甘い物を食べ過ぎると腎を圧迫し水の変調をきたし尿の不調和をまねき、膀胱炎、腎炎ひいては骨がもろくなり骨粗鬆症、骨折、腰痛、腰の冷え等バランスを崩してきます。それとは逆に腎臓が病的に強過ぎる場合には、甘い物を余分に取るようにしなければなりません。
この様に五臓(肝心脾肺腎)はバランスをとって調和を保とうとしております。

 
五臓(肝心脾肺腎)の虚実による食物の五味(酸苦甘辛鹹)の取り方についてまとめてみました。


[食物の気]の働き

食物には「酸・苦・甘・辛・鹹」の五つの味があることは、先に述べましたが、その他に目には見えない働きがあります。この働きの事を「食物の気」と言います。この「食物の気」を「薬性」とも言われております。これは、食物の持っている独特の性質で、「寒」「微寒」「平」「温」「微温」で表現しております。こういうわけで気には、寒温平の三種類があります。「」というのは、食物や生薬(しょうやく)が体の中に入った時に、冷やしてしまう働きの事を言います。「」は温める働きの事です。また、「」にも「」にもどちらにも偏らないで、味の働きが主となっているものを「平」と言います。軽く冷やすのを「微寒」軽く温めるのを「微温」と言います。この様な事から漢方では、この気の働きと先ほど述べました味の働きを合わせたものを「気味」と言い、その「気味」の組み合わせで、食物や生薬が体に作用する事を論理を以って現しております。
     
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少し専門的になりますが、肝虚のときは、酸味を用いて其の虚を補い、心虚のときは、苦味を用いて其の虚を補い、脾虚のときは、甘味を用いて其の虚を補い、肺虚のときは辛味を用いてその虚を補い、腎虚のときは鹹味を用いてその虚を補うのであります。わかりやすく言いますと肝臓が弱ると酸っぱい味で補い、心臓が弱ると苦い味のものを取って補い、脾臓や胃が弱ると甘い味のものを取って補い、肺臓が弱ると辛い味のものを取って補い、腎臓の弱ったときは、鹹い味(しおからい味)を取って補いなさいと言うことです。   それで、辛い味で温める作用のあるものを「辛温」と言い、また辛い味で冷やす作用のあるものを「辛寒」と言い、どちらにも属さないものを「辛平」と言います。同様に「苦温」「苦寒」「苦平」「甘温」「甘寒」「甘平」「酸温」「酸寒」「酸平」「鹹温」「鹹寒」「鹹平」で現します。
例えば、「辛温」について説明しますと、辛は肺の働きを高めますから、温めて肺の働きを良くすると考えます。

     
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  以上の事から食物の気味をあらわしてみますと                                                             「酸 あんず・りんご・すもも   「苦よもぎ・ふき・たらの芽・アブラナ   「甘うどん・うなぎ・まぐろ・タイ・牡蠣・アジ・エビ・フナ・アユ・マス・ナマズ・カツオ・トビウオ・カマス・サワラ・イワシ・かぼちゃ・なつめ・やまいも・ざくろ・雀・羊肉・牛肉・黄大豆・小麦粉・かまぼこ  「辛大根・カブラ・カラシ・ねぎ・らっきょう・にんにく・山椒・胡椒・生姜・とうがらし・わさび・春菊・紫蘇・にら・もも・酒・ウイスキー・ワイン   「鹹めざし・干物・つくだに・栗・くらげ・いわし・さば・納豆・みそ・大麦「酸梅・かりん・ヨーグルト・はこべ・金柑・木苺・イカ・米酢  「苦うど・菊花・ぎんなん  「甘ゴマ・大豆・米・甘藷・蓮根・鶏卵・黒大豆・赤小豆・ハチミツ・水あめ・とうもろこし・ぶどう・百合・たんぽぽ・クコ・なつめ・びわ・いちじく・いちご・蓮の実・ハゼ・スズキ・ハモ・サヨリ・カレイ・サメ・フカ・イセエビ・なまこ・すっぽん・赤貝・ウズラ  「辛さといも・酒かす   「鹹シジミ・ヒジキ・わかめ・しょうゆ  「酸ゆず・橙・すだち・レモン  「苦お茶・コーヒー・ビール・たけのこ・ごぼう・にがうり・たかな・ほうれん草・ちしゃ  「甘小麦・砂糖・ナス・きゅうり・キャベツ・トマト・はくさい・レタス・わらび・柿・みかん・すいか・なし・とうふ・こんにゃく・そば・マクワウリ・たこ・タニシ・バイ・あさり貝・鴨  「辛ずいき   「鹹あおのり・食塩・カニ・昆布・ハマグリ・もずく・麦芽・牛乳
                                                                                 以上の五味(酸・苦・甘・辛・鹹)が五臓を養っている事になります。この事を考えて、バランスの取れた食物を取る事に気をつけて食生活をすべきであります。


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